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6. 読みやすさとアクセシビリティ

MURATA Makoto edited this page Jan 6, 2024 · 30 revisions

6. 読みやすさとアクセシビリティ

6.1 アクセシビリティとは

本文書におけるアクセシビリティとは、障害者が他の人と同じように日本語デジタルテキストを読めることをいう。ただし、アクセシビリティは一般の人々にも関係することを忘れてはならない。誰でも一時的に障害を経験する可能性はあるし、高齢になれば視力は衰える。

アクセシビリティを達成する方法にはいくつかあるが、ここではデジタルテキストをユーザに提示するエージェントがアクセシビリティのための機能を考える。

一般的に、アクセシビリティ機能と聞くと、全盲の人に対するテキストの読み上げを思い浮かべる方が多いだろう。これは間違ってはいないが、他の障害や支援機能を忘れてはならない。

第一に、全盲以外に弱視、学習障害、肢体不自由などの多くの障害が読むことを妨げる。とくに学習障害は、人数がきわめて多いのにも関わらず一般にはよく理解されていない。知的発達に遅れはなく、視力検査の結果が悪くなくても、学習障害のために日本語テキストを読むことが困難な人は存在する。

第二に、読み上げ以外にも多くのアクセシビリティ機能が存在する。

電子書籍が備えるべきアクセシビリティを参照。

6.2 アクセシビリティのための日本語デジタルテキスト組版機能

広範囲の障害に有益なアクセシビリティ機能のうち、ここでは日本語デジタルテキストの組版に関連するものだけを取り上げる。どんな言語にも当てはまると思われる機能(たとえば、前景色と背景色の組み合わせの変更機能)や組版と関係しない機能(例えば読み上げやキーボードによる操作)は取り上げない。

字間の調整

字間が不十分だと、弱視や学習障害の人の一部には読みにくいことがある。文字と隣の文字が重なって見えてしまうためである。これをcrowding effectという。

  • 教科用拡大図書の標準的な規格(文部科学大臣が平成20年12月25日に決定し、平成22年1月15日に改正したもの)では、文字詰めをしないこと(つまりマイナスの字間を指定しないこと)を原則としている。
  • 国内のDAISY教科書リーダでは、プラスの字間(仮想ボディの寸法の0.2倍)をデフォールトとしている。

行間の調整

字間と同じく、行間が不十分だと弱視や学習障害の人の一部には読みにくいことがある。

  • 教科用拡大図書の標準的な規格では、ルビの付いていない場合の行間は、文字の大きさの2分の1程度以上とし、ルビが付いている場合の行間はさらに広くするとしている。
  • 国内のDAISY教科書リーダでは、ルビは付いていることが多く、広めの行間(仮想ボディの寸法の1.6倍)をデフォールトとしている。これはCSSのline-height: 260%に相当する。

フォント

フォントそのものは、本文書の対象ではないので、どんなフォントがアクセシビリティという点で優れているかは論じない。しかし、アクセシビリティに優れているとされている国内のUDフォントのほとんどは字面が大きいこと、したがって広めの字間・行間を必要とする可能性があることを指摘しておく。

分かち書き

縦組・横組の変換

縦組みは読めない人、逆に横組みが読めない人がいることが知られている。国内のDAISY教科書リーダは、縦組・横組の切り替え機能を有している。

単語へのルビの付与

障害のためテキストを読むことが難しいと、漢字を苦手とすることがある。易しい漢字にもルビを振れば、漢字を苦手とする人にも読めるようになる。

一方、ルビがあるとかえって読めなくなる人もいることが知られている。これは、学習障害の人の一部は親文字とルビを分けることができず、一つの文字として見えてしまうためである。

ルビと親文字の距離

ルビと親文字を区別しやすくするために、ルビと親文字の距離を空けることは有用であると思われる。

ただし、ルビと親文字の距離を空ける相互運用性のある方法が現在のWeb技術には存在しないので、 国内のDAISY教科書リーダでもこれは実装されていない。

ルビの色

親文字と別の色をルビに指定することは、親文字とルビを区別できない人の助けになる。これは、 国内のDAISY教科書リーダでも実装されている。

6.2 ???

敏先生「日本語組版の読みやすさ 」 https://github.com/w3c/jlreq-d/issues/12