わたしの名前は、しき。
わたし、…こんどのハロウィンに死んじゃうみたい。
…えっと、どこから話せばいいんだろう…。日記なんて、書いたこと無かったから…。
***
わたしはいつも、タイジュの里で草や木…植物たちと暮らしてるんだ。
だから、…「わたしたち」…の方が、正しいのかな?
それで、あれは、…すごく暑い日だったなぁ。いつも一緒に寝ている里の外の大きな子…
ああ、ごめん。わたしはあの子をみんながなんて呼んでいるのかは、知らないんだ。あそこにいる、あの子って呼んでるから。
ええっと、その子に水をあげて、葉っぱについた土を地面に戻してあげて、いつもみたいにぎゅ〜って抱っこして、またねってして、他の子にも会いに行こうって思って、
…そのときにね。
草むらに一人の風が駆け抜けて。
…わたし、あとお月様が二回回ったら…ううん、満ち欠けしたら、いなくなっちゃうっって…世界から消えちゃうって、なんとなく、わかったの。
わたし、びっくりしたよ。だってそんなの、おかしいもの。
気がつくとこの世界に現れていて、気がつくと、居なくなっちゃう。出てくるのも消えるのも、それがいつかは、けっして、わからない。
それが、わたしたち「魔女」なんだって。
みんなはそう言ってた。
難しいことはよくわからないけれど、きっとそうなんだと思う。
だって、そうじゃなかったら…もう今はどこにいるかもわからないみんなと、もっともっと、お話できたはずだもの。
だからね。
わたしは、きっとこれは夢の中なのかなって思ったんだ。夢の中なら、魔法でも絶対に起きないことがいっぱい起きるでしょう?わたしがいつ消えちゃうか分かっちゃったのは、きっと夢なんだって。ねぼすけなんだって。
でもね、ほっぺたをつねったり、土を触ってみてわかったの。これは、夢じゃないって。ほっぺたは痛かったし、土のさわりごこちはふかふかしてて、夢の中のとはぜんぜん違って優しかったし。
何回も何回も試したんだよ。でも、雲の上でお昼寝してたり、水の中の泡ですやすやしてた時とは、全然違うの。
だから。わたしは、きっと本当に、もうすぐ居なくなっちゃうんだと思う。
わたしはどうしたら、いいのかな。みんなに聞いてみようかな。みんな、信じてくれるかな。
***
「わたしたちも、そのもうちょっと後には消えてしまうかな」
葉っぱのみんなに聞くと、そう教えてくれた。たしかに、葉っぱのみんなは、毎年いつも同じころに真っ赤になって散っちゃうよね。
「どうして、まだ先のことなのに、わかるの?」
そう聞くと、葉っぱのみんんは風に揺れながら教えてくれる。
「わたしたちを産んでくれた、樹がおしえてくれるんだ。この世界には季節があって、あたたかい頃にうまれたぼくたち葉っぱは、消えてしまうんだって」
「樹のことを、恨んだりはしないの?」
「どうして?」
「寒くなれば消えてしまうと分かっているのに、産んでしまうなんて」
「そんなことはないかな。わたしには悔いはないよ」
「そうなんだ」
***
「俺にはわからないな」
通りすがりのばったに聞くと、そう教えてくれた。
「本当に季節?なんてあるのか?たしかに、前よりも寒くなったのはたしかだ。でも、これからもずっと寒くなると、どうして言えるのさ?」
「いつもそうだから…?」
「毎年、毎年、っていうけどさ、本当に何もかもが同じなわけじゃないんだろう?暖かいときだって、あるかもしれないじゃないか」
「たしかに、そうかも」
***
みんなに聞いてみると、みんなどう思ってるのか、みんな違うってことはわかった。